2007/05/13

雑談 :: イチローが通訳を利用する理由

さて、また雑談いきます。



Yahoo!ニュースに、
イチロー、英語ペラペラなのに通訳を使う理由は?
という記事がありました。

アメリカ生活も長く、英語も不自由なく使用できるはずなのに、
メッセージを発するときに、なぜ未だ通訳を通すのだろうか、
という内容です。

記事中では、イチロー選手が通訳を利用する理由として、
誤解を招かないようにしたり、メディアとの距離を保つため、
という地元紙の主張を挙げています。

また年間最多安打新記録の樹立時には英語でスピーチしたことを受け、
安易に英語を使わないのはファンや選手への敬意の表れとしています。

確かに、いくら英語漬けの生活が日常的に長く続いているとはいえ、
ネイティブではないこともあり、細かい表現のニュアンスなど、
正確に伝えきれない可能性もあるかもしれません。

日本語での会見でも、言葉を選んで発しているイチロー選手のこと、
メディアコントロールの側面も多分に考えられることではあります。



ところで以前、日本のとある大きな通信会社の地方支社のトップが、
外国のメディアにインタビューを受けている映像を見た事があります。

そのインタビューでは、外国メディア側は英語を使用し、通訳なし。
日本企業のトップは、通訳担当者を伴って受け答えをしていました。

外国メディア側は英語で質問し、日本企業のトップは日本語で返す。
そして通訳が日本語を英語に直ちに翻訳してメディアに伝える。

ごくごく普通の通訳の光景に見えますが、
当然あるはずのプロセスが、一つ抜けているのにお気づきでしょうか。

そう、外国メディアの質問を日本語に翻訳するという過程がありません。
日本企業のトップは、英語の質問を自ら解釈して、
通訳を通すことなく、即座に日本語で返答していたのです。



この光景を目にしたとき、非常に衝撃を受けました。

英語から日本語への翻訳のプロセスだけでも、通訳を介さないのは、
単純にコミュニケーションの迅速化につながるのは確かです。
でも、ここにはそれ以上のアドバンテージを感じました。

”あなたは私の話す日本語を理解できないが、
私はあなたの話す英語を理解できる”
単純に一つのプロセスを省いただけなのに、
上記の事実が、直接ではなく、
しかしあからさまに示される。

ビジネスでの共通語・英語ではなく日本語を話すことで、
日本人としてのアイデンティティーを示すだけでなく、
欧米だけが世界の全てではない、という暗黙の主張となる。

深読みしすぎかもしれませんが、これは恐ろしいほどの衝撃でした。



話は戻って、使えるはずの英語を滅多に使わないイチロー選手。

ワールドベースボールクラシックでも、
世界、とりわけアメリカに目にもの見せてやる、
といった気迫が感じられました。

メジャーという場に身を置き、メジャーに敬意を払いつつ、
日本野球、日本人であることの誇りも誰よりも高い。

イチロー選手が安易に英語を使わない理由。
もしかすると、こうした誇りに基づくものなのかもしれません。

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